キャッチコピーを考える時やマーケティングの手段として意識しておきたいのが「心理学」です。
デザイナーも絶対知っておいた方がいい項目なのですが、フタを開けてみれば、日常のコミュニケーションでも活きてくるものばかりでした。
なるべく小難しい言葉を使っていないので、解釈に個人差や誤解が生まれてしまうかもしれませんが、その際はやさしくご指摘いただけると幸いです!
今回は「好印象を与えるための心理学」「ウラをかいて印象づける心理学」「不快な印象を与えないため、気をつけたい心理学」の3編でお送りいたします。
高印象をあたえるための心理学 ウラをかいて印象付ける心理学 不快な印象を与えないため、気をつけたい心理学
好印象を与えるための心理学
ハロー効果/認知バイアス
ある目立つ特徴や構成要素に影響されて、印象や評価が変わってしまうこと。
ぱっと見や外見でその人を判断してしまうのも、これにあたります。
営業先やパーティーで良いスーツを着ていくのが有効に働く理由でもありますね!
バンドワゴン効果
多数に人気がある/支持されているものに魅力を感じてしまうことを「バンドワゴン効果」といいます。
野次馬的な盛り上がりもこれです。
スリーパー効果
最初は発言者や発言内容の信ぴょう性が大きく影響するものの、時間が経つにつれて、その内容だけが頭に残ることを「スリーパー効果」と言います。
つまり、有益なことを発信して気に留めてもらえていれば、最初に抱いた不信感は大抵の場合は消えてしまうことが多いよ、ってことですね。
初頭効果
表情や髪型、姿勢などの「身なり」…会って7秒で印象は決まる、と言われています。
元にアメリカ政府などの役人たちは重要な場ではイメージコンサルタントが指導に入ることもあるため「第一印象」を大事にすること(=初頭効果)が与える影響が大きいことがわかります。
つまり、人のイメージ形成は、最初に得た印象が大きく作用するのです。これを「初頭効果」といいます。
親近効果
最後に提示された情報が強く印象に残り、その後の印象に作用すること。
コンビニや何かしらの店舗で、お店に入った時よりもお店から出たときの接客があなたに良い印象を残していたら「親近効果」が働いているということです。清々しいですよね。
初頭効果/親近効果の使い分けは?
ターゲットの関心が薄い場合には「初頭効果」で惹きつけるほうが吉。
ターゲットの関心が高い場合は「親近効果」で最後にメリットやセールスポイントを打ち出すのが吉とされています。
ベイビーフェイス効果
「かわいい」と感じるものに対して、「優しい、温かい」という印象を受けること。
似顔絵に暖かなイメージを覚えるのもこれにあたります。画のタッチによりますが。
プラシーボ効果
ラテン語で「喜ばせる」という意味の「プラシーボ」は、イメージを強く保つ・与えることで、体験した人や物事がそのとおりになったり快方に向かうことを言います。
某除菌スプレーのCMは、部屋に噴きかけた瞬間に水しぶきが何かを洗い流すような描写が入ります。
除菌や消臭に効果があると印象を与えやすいのを狙っていますが、利用体験をイメージさせる一種のプラシーボ効果です。
バーナム効果
曖昧な表現でも自分にとって肯定的な意見や情報を信じてしまうこと。
「自分のことを言い当てられた」感覚に陥るのです。
とても簡単な例ですが「いま、●●なあなたへ」などと言った書き方はコンバージョンの向上につながるそうです。
ザイオンス効果/単純接触効果
接触回数が増えるごとに好感度が上がること。
リマーケティング広告はこれを利用したもので、何度も目につくことで心理的障壁を下げたりします。
毎日顔を合わせるクラスメートを好きになってしまうのもこれです。
ツァイガルニック効果
テレビやマンガで肝心なところが次週に持ち越されたりしますが
完成してまとまっているものよりも、不完全なものに興味を惹かれる心理のことを「ツァイガルニック効果」といいます。
電車内での電話が2人組の話し声よりも気になってしまうときも、「相手がいない会話=会話として不完全」ということからこの例に当てはまると言われています。
クレショフ効果
画像や写真、文字などの情報がなくても目で見たものだけでイメージを形成してしまうこと。
穏やかな坂が続いていて、道の両脇には少し古びた家やお店が並んでいる風景を写真に撮ったとしましょう。
文字や音声が付いているわけではありませんしその街のことをよく知らなくても「穏やかなところだなぁ」と思いますよね。
それ、すでにイメージ作っちゃってますよ。「クレショフ効果」です。
カクテルパティー効果
自分に関係している情報には注意や意識が向いてしまうこと。
名前のままなのですが、カクテルを飲んでいるパーティ会場で盛り上がっていても、自分の名前が呼ばれると不思議と耳に入ってくることに由来しています。
少し前だと、コカ・コーラの「名前入りボトル」なんかはこれに近い上手な売り方だと思います。
自分の名前があったら手にとってしまいますよね。僕は無かったです。
エピソード記憶
記憶というものは、関連するエピソードとともに脳内にしまわれることが多く、これを「エピソード記憶」といいます。
「小さい頃に食べたおふくろの味」などベタですがこの「エピソード記憶」の代表とも言えます。
商品やサービスを売る際に、上の例のような「誰もが経験したことがあるようなエピソード」を提示することで、その商品やサービスの特定のイメージを強く植えつけることが出来ます。
シャンパルティエ効果
10kgのダンボールと、10kgの鉄アレイ。これはどちらが重いでしょうか?
どちらも同じですが、間隔や外見では同じには見えにくいと思います。
このように、数値や価値はひとによって様々であり錯覚してしまうことを「シャンパルティエ効果」といいます。
数字の表記を用いたキャッチコピーは気をつけたいですね。
アンカリング効果
提示された、もしくは最初に目についた数字が基準(アンカー)となり、その後の判断に影響をおよぼす心理のことを「アンカー効果」といいます。
多少、「ふっかけた」方が得を招くようです。
ウラをかいて印象付ける心理学
エスカレーター効果
エスカレーターといえば自動で動いているもの。
そう認識しているため、いざエスカレーターに足を乗せた時に、工事中などで動き出さなかったときの「まじかよ!」が印象に残るのです。
「こうだろう」と思い込んでいるこのに対して予想に反することが起こったときに与える違和感は、良し悪し問わずとても印象に残るということを、先ほどのエスカレーターの例になぞらえて「エスカレーター効果」といいます。
これはUIやUXで利用できる考え方です。
決定回避の法則
人間は、選択肢が増えるとその中から選択決定することが困難になります。これを「決定回避の法則」といいます。
マジカルナンバー7(後に「4」が提唱されている)のように選択肢を限定的にすることで、よりスムーズなコンバージョンが図れます。
現状維持の法則
前項の「決定回避の法則」と合わせて語られるのが「現状維持の法則」。選択肢が広がりすぎた際に、普段と変わらない選択をしてしまうことを言います。
旅先でマクドナルドに寄ってしまうあれです。
コントラスト効果
高額な商品を購入したあと、それ以下の価格帯の商品に手が伸びてしまう、一種の「金銭感覚の麻痺状態」のこと。
コントラストをWebに応用するなら?
ネットショップで購入ボタンの近くにある「送料無料まであともう1品」という提示の仕方。
テンション・リダクション
緊張する出来事を終えたあとや困難な目標を達成したあとに、解放されたがゆえに一時的に無防備な状態になってしまうこと。
気になっている女の子との初デートのあとの自分。
ユーザー側が行動を終えた後(=購入後)にもうひと押しする「この商品を購入した方はこちらの商品も気になっています」が効果的なのはこれが理由です。
ストループ効果
「黄緑で書かれた”青”という文字」「赤で書かれた”黄色”という文字」。と言った具合に、
同時に目に入る情報同士が干渉しあって、意味がわかりづらくなったり混乱することを「ストループ効果」といいます。
あとで出てくる「認知的不協和」とは違います。
プライミング効果
先に”情報”として与えられている情報、批評が、あとの情報や印象に影響を及ぼしてしまうこと。
雑誌、TVで知った口コミ有名飲食店。足を運んでメニューを頼んでみたが、意外と腑に落ちない味だった。
しかしそのとき、心理的には「口コミで評判の有名店に行った=まぁ美味しかったとしよう」と自己解決がなされるのですね。
これは先に「美味しい」や「話題のお店」などと好評を知っているため起こったプライミング効果です。
カリギュラ効果
強く禁止されるほど、反対に、行動を起こしてしまいたくなる心理現象。
ストレートに応用できる点といえば、キャッチコピーです。
「当社の考えに賛同いただけない方は絶対に先のページヘ進まないでください」
など、必要以外は全てふるい落とすような言い切り方をすると、カリギュラ効果を誘導しやすいです。
これを日常のコミュニケーションで応用したらドSのレッテルを貼られていきます。
コンコルド効果
イギリスとフランスが共同開発した「コンコルド」という旅客機がありました。
注目を集めた後に製造中止となりましたが、これは事前に把握できていたことでした。が、
すでに多額の投資をしていたため後に引けなかったそうです。
このように、損失につながるとわかっていても、それまでの投資を惜しみ、止められなくなることを「コンコルド効果」といいます。
ちなみにここでいう「投資」には、お金だけでなく時間や精神的な投資も含まれるので、様々な考え方ができます。
同調効果
旅行先やお祭などで、いつもは買わないような屋台の焼きそばやおみやげ品などを目の当たりにして、思わず財布の紐が緩むことがあるかと思います。
このように非日常的な環境による興奮状態が購入を促進することを「同調効果」といいます。
これを応用する場合は「非日常」の演出が鍵となります。
たとえばリゾート地や旅行代理店の広告やWebサイト、キャンペーンであればとびきりの景色の写真を使うなど。
ディドロ効果
自分が理想とするものが手に入り、すでにある所有物と適合しなかったとき。
新しく手に入れたものを基準として、すでにある所有物を変えていくことを「ディドロ効果」といいます。
新しい部屋でインテリアを買ったときにありがちな現象です。
「コントラスト効果」などとあわせて上手く考えていくと、商品やサービスの購入後は攻め時だということが解りますね。
一貫性の原理
一度決めたことはやり通そうとしてしまうのが性(さが)ですが、それを「一貫性の原理」といいます。
購入前はもちろん、購入後のユーザーに対しても、煽りを効果的に使うことで刺激してクロスセルを狙える考え方ですね。
返報性の原理
人間は、無償でなにかを与えられた時に「お返しをしなければ」という心理が働きます。これを「返報性の原理」といいます。
デパートの試食がこれにあたりますが、Webでの顕著な効果をあげるのは難しいような気がします。
認知的不協和
矛盾が生じて不快な印象を受けることを「認知的不協和」といいます。
「小さな巨人ミクロマン」がまさにこれです。
「小さな⇔巨人⇔ミクロ」…?ここでの矛盾が記憶に残す大きな鍵となるのです。
ほかには、「ダイエットをしている。決まりを破ることになるが、もう食べてしまいたい」状態は認知的不協和にあたります。
- 認知的不協和を作り出すことで印象付けるか、
- 認知的不協和に対して解決策を提示して印象付けるか
の二通りがあるように思えます。
どちらかというと「ミスマッチ」の意味合いが強い「ストループ効果」とは違います。
ヴェブレン効果
購入サービスや物が効果であるほど、顕示的な欲求(自己主張的な)を満たし、それに従い購買意欲が増える心理現象を「ヴェブレン効果」といいます。
僕が昔勤めていた会社のECサイトでも値段を少し上げたことで、新規獲得につながったケースが有ります。
不快な印象を与えないため、気をつけたい心理学
損失回避の法則
人間は無意識のうちに、損失を出さないことを重要視して選択をしているそうです。これを「損失回避の法則」といいます。
ネットを介する場合は特に金銭的な損失が一番わかりやすいので、逆に「商品やサービスを利用しないことによる損失」をアピールしてあげましょう。
フォールス・コンセンサス
人はそれぞれ違った価値観を持っているものです。
自分の考えや行動は、あくまで自分にとっては「普通」の出来事ですが
それを、「他人もそうだろう」と思い込みがちなものなのです。
これを、「フォールス・コンセンサス」といいます。
アフォーダンス理論
「価値付けられた情報」によって人間の行動が結び付けられる現象。
ドアノブがついたドア。「回して引く/押すとドアが開く」という「『当たり前の行動』の思考」が、アフォーダンスです。
無意識のこれに反する自体が起こった場合、ユーザーは混乱します。
なのでよく言われている”リンクテキストは青にしておけよ”などの理由はここにあるのです。
想起集合
「シャンプーといえばメリットlというキャッチコピーは、耳に馴染みがあると思います。
「○○といえば●●」と言った具合に、あるジャンルにおいてイメージされるアイコン的なものを心理学で「想起集合」といいます。
サービスや商品は、適宜に応じた場所に存在してこそ価値を発揮します。ブランディングの目指すところがこれにあたると思います。
マーケティングの世界ではその「適宜に応じた場所」をつくることを「旗を立てる」「USP(独自の強み)」などと表したりします。
旗の立て方の一例としては、美容系のWEBや広告を多く手がけているデザイナーであれば、思い切って「美容・コスメ系メディア専門デザイナー」などと名乗ってしまう。振り切ったセグメントでブランディングをしてみるのも手ですね!
マッチングリスク意識
自身が起こした行動に対して、「効果や結果が伴わないのではないか」という不安を「マッチングリスク意識」といいます。
高額な有料サービスなどはまさにマッチングリスク意識を呼んでしまうので、無料期間や機能に制限を設けた廉価版などで不安を和らげることがリピーター獲得に繋がりそうです。
準拠集団
社会や学校では自然と、ライフスタイルや価値観が似た人たちで集団が構成されていきます。その集団のことを心理学では「準拠集団」といいます。
影響力の大きなところをターゲットとしてとらえることで大きな効果が狙えることが解ると思います。
要するに「インフルエンサー」ですね。
自己開示
自身の情報をさらけ出すことを心理学では「自己開示」といいます。
コミュニケーション手段としても、有効なのはお解りだと思います。
正直は大事ですよね。
連合の原理
天気予報が外れること数日。
「昨日も、晴れだって言ってたのに…」と気象予報士に文句を言いたくなります。
しかし、文句を言われるのもおかしな話ですよね。過去の統計なんて、誰がやっても同じなのに…
こうやって無意識に、「何か」と「何か」を結びけてしまうこと、「あるモノ」の良し悪しを結びつけて「別の、あるモノ」の印象が変わってしまうことを「連合の原理」といいます。
いかがでしたか。
ちょっと分け方が雑でしたが、この記事で内容を知って興味をもった方はぜひ掘り下げてみてください!
もしかたらアイデアが詰まっているかもしれませんので。
今回の記事のソースですが、だいたいこちらの書籍をベースに書いています。
実は結構どこのサイトの記事をみても、だいたい挙げてある項目は似ているんですね。
こちらの書籍にはその8割ほどが事例つきで紹介されていてとても解りやすいと思います。
ウェブに応用する際の例も書いてありますが、情報商材くさいことと、一昔前の雰囲気が否めないので、「ウェブに応用する例」は、すっ飛ばして読んで構わないと思います。
ただそれを差し引いてもとても有益な書籍ですよ!ぜひ手にとってみてください^^
でわ!