日銀が異次元緩和を開始したのが2013年4月なので、間もなく丸10年になる。2022年になって世界的なインフレになり日本の物価も日銀が目標とする2%を超えたのだが、日銀はまだ異次元緩和を続けている。この政策はいつまで続くのだろうか。
物価上昇を目標としていた
日本は2000年頃からデフレ経済が長期化し、物価が上がらず経済も成長しない状態が続いた。そこで2013年に就任した日銀の黒田総裁は、それまでとは全く違う金融政策としての異次元緩和を開始した。
異次元緩和の目標は物価上昇率を2%まで引き上げることだった。しかし、2010年代は日本だけではなく世界的に低インフレの時代だったため、なかなか目標を達成できずに異次元緩和政策も長期化し2020年代になっても続けられた。
しかし、2022年になって状況が一変した。コロナ禍で世界各国が膨大な金融緩和を行いサプライチェーンも混乱したことなどから、世界的にインフレが進行。日本も2022年になって物価上昇率は2%を超え、さらに3%も超えた。
それでも止めない日銀
しかし、物価上昇率が3%を超えても日銀は異次元緩和を止めようとしない。黒田総裁は2023年の春で任期が切れるので、もはや自分の任期中に異次元緩和の出口戦略を実行する意思はないかに見える。
そうなると異次元緩和の出口戦略は、2023年春に総裁が替わってからになる。2022年12月現在でまだ次期総裁は発表されていないが、近いうちに決定して発表されるだろう。10年間続けてきた黒田総裁がこれ以上続ける可能性はほぼない。
物価と円安次第か
では次期総裁は就任してすぐに異次元緩和の出口へ向かう可能性があるのかと言えば、そうとも限らない。10年間も続けられてきた緩和を修正すると、日本経済や市民の生活に影響が大きいからだ。例えば緩和を止めて金利を引き上げると住宅ローン金利も上がるので、超低金利下で住宅ローンを組んだ家計が非常に苦しくなる。
ここで注目したいのが日本の物価の動向と、為替レートだ。ドル/円のレートはネット上のいろいろなサイトで見られるが、例えば海外ブローカーのeasymarketsのサイトには見やすいチャートがある。
2022年はアメリカを初め海外の多くの国が金利を大きく引き上げたので、急激な円安が進行。2月には1ドル=115円だったレートが10月には一時150円を超えた。その後はようやく円安が止まったが、2023年になってまた円安が進行する可能性は残っている。
2023年になり円安や物価高が落ち着いてくれば、日銀はまだ異次元緩和政策を続けるだろう。だが円安や物価高が止まらないようなら、異次元緩和の修正を余儀なくされる。